業界の技術情報をわかりやすくご紹介します
技術ライブラリー

5軸加工機と5面加工機の違い
5軸加工機と5面加工機
5軸加工機と5面加工機はいずれも直線軸(X軸・Y軸・Z軸)の3軸と傾斜軸・回転軸の2軸を加えた加工機です。
どちらもワンチャッキングで多方向からの加工ができるため、極力段取り替えを行わない加工を行うことが可能です。
5軸加工機とは
いわゆる同時5軸加工を行うことのできる工作機械の事を指します。
5軸全てを同期しながら加工するだけではなく、傾斜軸と回転軸の位置決めをして3軸加工を行う割り出し5軸加工にも対応しています。
5軸加工機は、大型から小型のものまで多種多様あり、傾斜軸と回転軸がどちらもヘッド(主軸)側またはテーブル側に追加されているものや両方に1軸ずつ追加されているものもあります。
あらゆる方向から加工することが可能なため、工具の突き出しを短くして加工精度を向上させることや、複雑な形状の加工に適しています。
5面加工機とは
5面加工機は門型のような大型の工作機械に多く見られるのが特徴です。
サイコロでイメージすると、ワークを取り付けた際にテーブルに接触している面を除く、上面と前後左右の側面を加工することができることから5面加工機と呼ばれています。
5面加工機の中には傾斜軸が存在せず、上面からの3軸加工用のヘッドと工具を水平に取り付け旋回軸で側面を加工するヘッドを使用するものや旋回軸のヘッドに工具を水平と垂直の2方向に取り付けることができるものもあります。
現在では側面の加工が前後左右の4方向(回転軸が90度ずつの旋回)だけではなく、任意の角度に旋回できるものや、傾斜軸と回転軸が自由に動かせるユニバーサルヘッドを使用した割り出し5軸加工や同時5軸加工まで対応している機械も存在します。
機械が大型であることからワークも大物が多く、段取り替えを行うことが容易ではないため、多方向からの加工で工程を集約し、段取り替えの回数を削減しています
5軸加工機と5面加工機のメリットとデメリット
共通のメリット
・複雑な形状の加工が可能
工具が届きにくい部分やアンダーカットの加工が可能となるため、複雑な形状の加工が可能となります。
それは高付加価値製品が製造できることに繋がり、会社にとっての強みになります。
・加工時間の削減
ワンチャッキングで多方向からの加工ができるため段取り替えを極力少なく加工を行うことができます。
段取り替えを行う際にはワークを設置するだけではなく、ワークの座標系(原点)を新たに設定など、手間がかかります。
単純にその時間が削減できるだけでも大幅に加工時間を短縮することが可能です。
・加工精度の向上
段取り替えを行うとワークをクランプする際にズレやひずみが生じる場合があります。
その誤差を最小限に抑えたり、本来突き出しが長い工具を使用してビビりが発生する部分を、短い突き出しの工具で加工が可能になることから加工精度の向上が見込めます。
共通のデメリット
・導入コストが高い
軸数が多くなるため、一般的に3軸加工機と比較して高額になります。
複雑な加工を行うためにはCAD/CAMの導入も必要となるため、導入時の負担は大きくなってしまいます。
長期的に見れば、導入の効果による投資回収は可能ですが、中小企業にとってはハードルが高くなってしまう場合もあります。
・加工の難易度が高い
複雑な加工ができるということは、それだけオペレーションの難易度も高くなります。
3軸までの加工機とは異なる操作スキルやCAD/CAMの知識も必要となります。
オペレーターの育成が滞ってしまうと機械の可動率が上がらず、投資費用の回収に時間がかかってしまう場合もあります。
5軸加工機と5面加工機は全く同じものではありませんのでご注意を
それぞれの強み
・5軸加工機は先端点制御を搭載している
全ての5軸加工機ではありませんが、現在はほとんどの5軸加工機が工具先端点制御の機能を有しています。
これにより直感的な座標の指令が可能となり、精密な加工が可能となります。
最近は傾斜軸と回転軸のズレを補正する機械もあるため、複雑かつ高精度な加工を実現しています。
・5面加工機は重切削に適している
5軸加工機(同時5軸加工)は傾斜軸と回転軸が動きながら加工するため、高い剛生を保つことが困難です。
それに対して5面加工機は、旋回軸をクランプしてから加工を行うため、重切削に耐えうる高い剛生を維持しています。