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3軸加工とは

3D形状を形にする:3軸加工の基礎知識と活用法

2.5軸加工では、平面や段差といった「カクカクした形状」がメインでした。
しかし、スマートフォンの筐体や自動車のボディのような、複雑で美しい「曲面」を作るには3軸加工が不可欠です。

3軸加工とは

3軸加工とは、X(左右)、Y(前後)、Z(上下)の3つの軸を「同時」に制御して動かす加工方法です。
動きの特徴: 3つの軸がシンクロして動くため、斜面や球面、自由曲面をなぞるように削ることができます。
違い:2.5軸は平面を削っている間、Z軸は固定に対し、3軸は平面を移動しながら、同時にZ軸も上下に動く。

3軸加工で使われるMastercamの代表的なツールパス

3軸加工では、2D加工とは全く異なる計算方法(3Dツールパス)を使用します。

等高線加工: 山の等高線のように、一定の高さごとに横方向に削っていく方法。急斜面に適しています。
走査線加工: 一定方向に平行に工具を走らせる方法。緩やかな斜面を綺麗に仕上げるのに向いています。
3Dダイナミックミル(ダイナミックオプティラフ): 3Dモデルの形状を認識し、最も効率的な経路で一気に荒削りを
行う強力な機能です。
 

3軸加工を成功させるポイント:スキャロップハイト

3軸加工で避けて通れないのがスキャロップハイトという概念です。
球体などの曲面をボールエンドミル(先端が丸い工具)で削ると、どうしてもパスとパスの間に小さな盛り上がり
(削り残し)が生じます。

この盛り上がりを最小限にするには、パスの間隔(ピッチ)を極限まで細かくする必要がありますが、
その分加工時間は長くなります。
「表面の滑らかさ」と「加工時間」のバランスを考えるのが、3軸加工のプロの腕の見せ所です。
 

3軸加工の注意点

工具の選定: 主に「ボールエンドミル」や「ラジアスエンドミル」を使用します。
      先端の形状が仕上がり面に直結するため、工具の振れ精度が極めて重要になります。
データ量 : 2.5軸に比べて計算量が膨大になり、NCプログラムの行数も数万〜数十万行に及ぶことがあります。
干渉リスク: 工具が複雑に動くため、長い工具を使った際の「たわみ」や、深い場所を削る際の
      「ホルダーの衝突」に対して、より高度なシミュレーションが求められます。

まとめ:3軸加工で広がるものづくりの可能性

3軸加工をマスターすれば、金型、医療用パーツ、意匠性の高い製品など、作れるものの幅が一気に広がります。
MastercamなどのCAMソフトを使いこなし、いかに「磨き」のいらない綺麗な面を出すかが、次なるステップの
目標となります。

3軸加工の核心:工具の使い分けと工程の組み方

3軸加工は、ただ3次元モデルをなぞれば良いわけではありません。
「どの工具で」「どの順番で」削るかが、品質とコストを左右します。

1. 工具の使い分け:フラット vs ボール vs ラジアス

3軸加工では、形状に合わせて工具を使い分けるのが鉄則です。

・フラットエンドミル
用途: 平らな面(底面)や垂直な壁面の荒加工。
特徴: 先端が平らなため、平面を効率よく削れますが、曲面を削ると「階段状」の段差が大きく残って
しまいます。
・ボールエンドミル
用途: 3次元曲面の仕上げ。
特徴: 先端が球状なので、斜面や曲面を滑らかに削れます。3軸加工のメインプレイヤーです。
・ラジアスエンドミル(ブルノーズ)
用途: 荒加工〜中仕上げ。
特徴: 外周の角にだけ小さなRがついた工具。フラットより欠けにくく、ボールより底面を広く削れる
「いいとこ取り」の工具です。

2. 効率を最大化する「工程設計」の3ステップ

大きな塊から完成形へ導くには、段階を踏んだアプローチが必要です。

ステップ1  粗加工
目的: 形状をざっくりと削り出し、余分な肉を素早く除去すること。
手法: Mastercamのダイナミックオプティラフなどが活躍します。
ポイント: 大きな径のフラットやラジアス工具を使い、削り残し量(ストック)を一定に保つように削ります。

ステップ2  中仕上げ
目的: 仕上げ加工の負荷を一定にするため、荒加工で残った「大きな段差」を細かくすること。
手法: 「等高線加工」などで、階段状の角を落とします。
ポイント: ここで手を抜くと、仕上げ加工時にボールエンドミルにかかる負荷が不安定になり、折損や加工紋(ビビリ)の原因になります。

ステップ3  仕上げ加工
目的: 最終的な寸法精度と、美しい表面粗さを出すこと。
手法: ボールエンドミルを用い、「走査線加工」や「等高線加工」を非常に細かいピッチで実行します。
ポイント: ピッチ(工具が横にずれる量)を小さくするほど、鏡面に近い滑らかな面になります。

3. 知っておきたい「3軸加工の弱点」

3軸加工は万能に見えますが、どうしても苦手な部分があります。
深い溝やポケット: 工具が届かない「深い場所」は、工具を長く出す必要があります。
          しかし、長すぎると「たわみ」が生じて精度が落ちるため、放電加工との組み合わせや、
          あるいは「5軸加工」への切り替えを検討するタイミングになります。
アンダーカット: 3軸加工は上からしか刃が来ないため、アンダーカット形状は削れません。