製品を導入されたお客様の声を紹介します
事例紹介

Mastercamとともに自由な発想で、未来を切り出す。
- 教育機関
- 山梨県立甲府工業高等学校 専攻科創造工学科
山梨県立甲府工業高等学校 専攻科創造工学科は、山梨県の機械・電子産業を支える“ものづくり人材”の育成を目的に、即戦力として活躍できる高度な知識と技能を備えた技術者を輩出してきた。
工業高校の3年間を修了した学生が、さらに2年間の専門的な学びを重ねることで、設計力や実践力を高め、将来のリーダーとしての資質を養う。
同校の大きな特徴は、企業と連携した「デュアルシステム」による教育体制にある。
実際の現場で求められる技術を学ぶため、CNC旋盤などの実習では企業の技術者が教員とともに指導を行うほか、5軸加工機など、高校レベルでは珍しい先端設備も導入している。
また、設計から加工までを一貫して学ぶ環境づくりの一環として、CAD/CAMソフト「Mastercam」も授業で活用しており、生徒と教員が共にソフト操作を通じて、現場で即戦力となる技能を習得している。
70社を超える協力企業との連携により、企業実習やインターンシップ、求人など、実社会と直結した学びの機会が充実しており、地域産業の未来を担う人材育成に力を注ぐ。
写真上:新設された専攻科創造工学科 外観
写真下:様々な工作機械を完備
インタビューにお応えいただいたのは・・・
実習教諭 渡邉 博 様
関心があることはまずはやってみる!
学生の好奇心と探究心を育む現場で、
自身の技術力向上にも努める。
Mastercam導入の背景と取材のきっかけ
専攻科創造工学科へのMastercam導入は約5年前、新学科の設立に伴う入札をきっかけにスタート。
弊社がソフトウェアを納入して以来、実際の授業運用やバージョンアップのタイミングなど継続的にサポート。
同校では、地域企業と連携しながら未来の技術者を育成していく教育的意義の高い取り組みを行なうなど、一般的な企業とは異なる運用スタイルが特徴。
人手不足が深刻化する製造業界にとっても、多くのヒントや可能性を感じられる事例として、今回の取材をお願いするに至った。
設備導入とともに始まった、ゼロからの挑戦
もともと私は一般の工業高校の教員でした。
まさか自分がCNC加工機やCAMソフトを扱う日が来るなんて、正直想像もしていませんでした。専攻科創造工学科(本文以下 創造工学科)に着任して、本校に新しい設備が導入されることになり、そのタイミングで「一から覚えるしかない」と腹をくくりました。
学生を受け入れる前に、協力企業の方々と一緒に研修を受ける機会がありました。
その中で、すでに導入されていたMastercamについて「業界シェアが高く、実際に使いやすい」と現場の方から聞きました。同時5軸加工のような高度な制御を行うにはCAMが不可欠で、私自身も必要性を強く感じていました。
ただ、当時は本当に何もわかっておらず、「ツールパスって何?」「ポストってどういう意味?」というレベル。
そんな中でMastercamの3日間講習に参加することになったのですが、最終日の段階でもまだ理解が追いついていないというのが正直なところでした。
でも、その講習の最後に企業の講師の方から言われたんです。
「次は先生が教える番ですね」って。あの一言が、自分の中で大きな転機になりました。
それからは、講習で配られたサンプルプログラムを何度も繰り返して、時間を見つけては毎日練習しました。
少しずつ操作に慣れていく中で、「これなら学生にも伝えられる」という手応えが生まれてきたんです。
今では、CAMの基本的な指導はもちろん、自信を持って5軸加工の指導にも取り組んでいます。
設備の導入と同時に、私自身もゼロからの挑戦を経験しましたが、学生と一緒に成長できるという点で、非常にやりがいのある環境だと感じています。
写真左:在学中に同時5軸加工を使い倒せる!実習ではマシンに触れる機会が多い。
写真右:操作画面を共有し課題解決に取り組む…緊張感もある中、教員・学生同士で協力する姿が印象的でした。
遊び心が探究心を育てる――実習サンプルの取り組み
Mastercamの操作にある程度慣れてきたタイミングで、加工サンプルの制作に取り組み始めました。
私自身が感じた“モノづくりの楽しさ”をまず学生たちに伝えたいという思いから、スキルアップにとどまらず、授業を通じてさまざまな加工にチャレンジしています。
企業とは異なり、教育機関だからこそできる“遊び心のある発想”が許される環境で、通常の研修では行わないような加工にも挑戦しています。その自由度が、学生たちの探究心や創造力を自然と引き出してくれていると感じています。
実習は少人数のグループで行われ、教員と学生が一体となって作業に取り組むため、お互いに支え合い、学び合える雰囲気が生まれています。こうした実践的な経験を重ねることで、学生たちは卒業時には即戦力として現場に出られるレベルにまで育っていきます。
実習内容も段階的にレベルアップしていき、最終的には自分でモデリングし、ツールパスを作成し、段取りから加工までを一貫して行うオリジナル製品の制作に挑みます。一人ひとりが“自分の手でつくる”という経験を通じて、設計から加工までの一連の流れをしっかりと体得しています。
ジェービーエムエンジニアリングより…
一般企業と異なり、教育機関ならではの自由な発想と探究心が反映された“遊び心のある加工サンプル”が非常に印象的でした。
ものづくりの楽しさを伝えながら、確かな技術力を身につけていく姿勢に、次世代を担う人材育成の可能性を強く感じました。
「五重塔」各塔がピッタリ組み立てられるよう精密に設計、加工(写真左)
「ひねくれた王将」遊び心を加工に具現化できるのも学校ならでは(写真中)
「金閣寺の鳳凰」ワイヤー放電加工で制作(写真右)
工業高校ならではの“現場”エピソード
トラウマ克服!? 汎用機械との再会から始まる成長ストーリー
創造工学科では、技能検定2級レベルの実習からスタートするため、フライス盤や旋盤の操作は必須科目です。ただ、高校時代に汎用機械で“ぶつけてしまった”経験や、先生に“ちょっと厳しく指導された”思い出がある学生も少なくありません(笑)
そんな苦手意識を少しでも払拭するために、放課後に予習の時間を設け、優しく丁寧に指導しています。
学生一人ひとりの弱点を「見える化」した掲示板を活用しながら、検定合格に向けた練習を積み重ねられる環境を整備。汎用機械の基礎をしっかり固めた上で、マシニングセンタやMastercamの習得へとステップアップできる仕組みが整っています。
その実績が認められ、ありがたいことに多くの協力企業から就職オファーをいただいています。機械系・電子系の両方を学べる創造工学科のカリキュラムは、実践力の高い“二刀流人材”の育成にもつながっていると実感しています。
“こんなの作る?”をやり切る!
学生発コーヒーフィルター計画
創造性を育む本校独自の授業「創造研究」では、学生自身が課題を設定し、テーマに沿って研究・製作に取り組んでいます。中には、「CADは得意だけどMastercamはこれから」という学生も、他のソフトで作成したモデルをMastercamに取り込み、ツールパスを組んで加工まで実現するなど、驚きの応用力を見せてくれます。
あるチームが取り組んでいたのは、なんと“コーヒーフィルター”の開発。形状を工夫するだけでなく、「湧出穴の数によって味が変わるのか?」という視点で試作と検証を繰り返すという本格的なアプローチ。さらに豆をより美味しく挽くためのグラインダー部品をマシニングセンタで加工できるように段取りするなど、学生たちはまさに真剣そのもの。
普通の会社なら「そんなの加工しないで(笑)」とツッコミが入りそうなテーマでも、ここでは“自由な発想を形にする力”が最大限に尊重されています。我々教員も、学生の柔軟なアイデアに刺激を受けながら、日々学び続けています。「そんなの無理だよ」で終わらせず、「やってみよう」を大切にしているのが、創造工学科らしさです。
日本の未来を担う人材づくりの最前線で
山梨県立甲府工業高等学校 専攻科創造工学科では、業界でも高いシェアを誇るCAMソフト「Mastercam」を採用し、実際の製造現場に近い環境で、加工の基礎から高度な技術までを着実に学ぶことができます。Mastercamは一見“玄人向け”と思われがちですが、学生たちは日々の実習を通じて自然とその操作に慣れ、使いこなす力を身につけています。
創造工学科は工業系高校を卒業した学生を対象とした教育機関ですが、そこに至るまでには、小・中学生の段階で“モノづくりって面白そうだ”と感じてもらうことが欠かせません。しっかりと学ぶ座学とあわせて、遊び心のある加工サンプルなどを用いた体験入学を通じて、モノづくりへの興味と探究心を育てる工夫も行っています。
少人数制で行われる専攻科の実習は、学生一人ひとりに目が行き届くだけでなく、教員だけでなく協力企業の技術者も講師として参加する恵まれた環境が整っています。時には、学生より講師の方が多くなることもあるほどで、その環境の充実ぶりに「教える側」の企業スタッフが思わず羨ましがることもあるそうです。
「こんなふうに学びたかった」と思える学びを提供することが、ものづくりの未来を支える人材づくりの第一歩。創造工学科は、地域と企業と教育が手を取り合い、日本の製造業の次代を担う人材育成に取り組み続けています。
ジェービーエムエンジニアリングより…
企業と連携しながら、次世代のものづくり人材を育てる姿勢に深く共感しています。
私たちも、現場に根ざした支援を通じて、これからの日本の製造業をともに支えていきたいと考えています。
御社の課題・疑問に合わせて最適なご提案も可能!お気軽にご連絡ください。